アート/ART 

ART PROGRAM K・T 

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美を巡る「花」Ⅰ

第32回・33回アート講座では、「花」をモチーフにした絵画・写真・書・陶器などを紹介しました。
アート/ARTでも、その作品の中から数回に亘って紹介致します。


【白百合】

レオナルド・ダ・ヴィンチ《受胎告知》1472~73年
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「受胎告知・部分」
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受胎告知は、大天使ガブリエルが聖母マリアを訪れ、聖霊により神の子キリストを授かったことを告げるという聖ルカ伝の記述をもとに描かれています。キリスト教絵画は、聖書が読めない人々に布教する目的で描かれました。それ故に、描かれた図像からその意味を読み取ることができる「読む絵画」です。

図像学(イコノグラフィー)古典絵画に描かれたいろいろな物の意味・約束事を読み解く為の学問
                   
白百合‥純潔の象徴   赤と青の衣‥聖母マリアを示す   立てた2本の指‥祝福を表す
雉‥権威  鳩‥聖霊  天使ガブリエルは左側に配置


フランツ・フォン・シュトック《無垢》1889年
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ドイツ象徴主義の画家です。
顔と腕と手にしたユリの花がリアルに描かれています。薄手のドレスが壁に溶け込んでいるようでもあり、女性が壁に包みこまれているようでもあります。顔と腕が壁から突き出ているようです。全体的な柔らかい色合いが美しく、その中の白百合の茎と頭部の暗色が印象的な作品です。茎と女性の体のラインで出来る逆三角形が、この作品の魅力的な要素だと思います。


松井冬子《印刻された四股の祭壇》2007年
印刻された四股の祭壇2007年_convert_20100720163729

松井の作品の魅力は、何といっても緊張感にあふれた美しい描線にあると思います。絵の具を何度も塗り重ねて色
彩による半抽象的な作品が多い昨今の日本画の世界にあって、松井は線で主張できる画家の一人です。
線の芸術である日本画本来の姿に戻ったかのような表現は、作品内容はともかく、厚塗りの日本画に見慣れてきた者に新鮮な感じを抱かせます。「幽霊」「死体」「内臓・脳」「切り裂かれた皮膚」「動物(犬)」などを題材として、日本画の伝統技法である絹本に岩絵の具を用いて(松井の成功はこの描法を選択したところにあると思います。)リアルな描写で「死」「狂気」「暴力」「恐怖」を表現しています。恐怖に満ちたグロテスクな画面は、見る者に“痛み”を感じさ、その痛みが「美」と結びつくところに松井の芸術世界が存在しています。
グロテスクな画面の中の白百合の存在が際立っています。
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テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

美を巡る「花」Ⅱ

【睡蓮】

モネ(1840-1926)印象主義の体現者

《睡蓮》1916年 国立西洋美術館 200.5×201cm
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《部分》
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印象派技法(筆触分割)から離れ、絵の具をキャンバスの上で混ぜています。モネの絵画的な関心は、光の効果や睡蓮そのものの描写ではなく、絵の具が混じり合うことで微妙に変化して、色同士が響き合う美しさに向かっていきました。絶妙の混ぜ具合で出来る色のムラの変化が、鑑賞者に味わいを感じさせます。


モネ《睡蓮》1917年~19年
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白内障が徐々に悪化している頃に描かれた睡蓮。まさに心の眼で描かれた睡蓮。まるでパステルで描いた自由な線画のようです。流動する線が生き生きと描かれています。睡蓮の連作と知っていて鑑賞するから睡蓮なのであって、知らなければ中心の無い抽象的な絵画作品のようです。(絵画の中心とは、花が描かれた静物画ならば花が中心) この睡蓮の連作を先駆として、視覚的中心が無く無焦点な(オ―ルオーバー)絵画を表出した画家がジャクソン・ポロックす。ポロックは戦後のアメリカの現代美術を代表する抽象表現主義の画家です。

ジャクソン・ポロック《秋のリズム》1951年
秋のリズム




《青花辰砂蓮花文壺》朝鮮時代・18世紀
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朝鮮時代(李朝)の陶磁器

李氏朝鮮(りしちょうせん、1392年ー1910年)は、朝鮮半島の最後の王朝。李朝(りちょう)とも言う(李王朝の意)。高麗の次の王朝。
朝鮮時代にはさまざまな陶磁器がつくられましたが、一貫して生産され続けたのが白磁です。とくに15世紀前半には、「世宗朝(1419~1450)の御器(ぎょき)は、もっぱら白磁を用う」という記録を裏付けるように、端正な器形と純白の釉調のすぐれた白磁を作りあげました。

青花辰砂蓮花文壺は大阪市立東洋陶磁美術館が所蔵する名品中の名品。李朝の美をいち早く知らしめた浅川伯教(あさかわのりたか)が所蔵していました。呉須によって線が描かれ、辰砂(しんしゃ・銅を成分とする赤い顔料)で彩色がなされています。優美さと気品を兼ね備えた一品だと思います。



《睡蓮》2002年 木彫   須田悦弘
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須田悦弘(1969~  )は、植物を木から彫り出し、それに彩色をする作品を制作しているアーティストです。作品は本物と見間違えるほどにリアルで精巧です。その作品が置かれる場所は「何でこんな所に、こんなものが‥」(デペイズマン)といった空間です。この睡蓮は、アクリル板に咲く睡蓮です。作品と作品が置かれた空間を合わせて作りだされるアートです。 現代の「よりリアルなもの」が追求されるアート・ワールドにあって、注目されている作家です。
シュルレアリスムを代表する画家で、デペイズマンの手法で描いたマグリットの「闘技士たちの墓」に通底すると思います。

【デペイズマンとは】
シュルレアリスムの常套的方法論で「不一致の一致」と訳されます。物を本来あるべきところから別のところへ移すことで新しい美やイメージを創り出す方法。全く関係のない物同士を共存させて“驚き”を生み出し不合理による創造性を呼び起そうとするもので、ロートレアモンの詩がデペイズマンのすべてを語りシュルレアリスムの美学となっています。


マグリット「闘技士たちの墓」1960年
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テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

美を巡る「花」Ⅲ

【薔薇】


倉又史郎《ミス・ブランチ》1988年 63.2×51.4×93.7
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倉又史郎(1934~1991)

プロダクトデザイン・空間デザインを数多く手掛けた世界的なデザイナーです。
「ミス・ブランチ」は、「欲望という名の電車」のヒロインの名前です。コクヨのサポートを受け、1988年の「KAGU展」(テーマは欲望)に出展されました。
彼の生涯のテーマは【夢心地】でした。アクリル樹脂に封じ込められた造花の薔薇は重力を失い、浮遊しているかのようです。装飾性に溢れた椅子です。
倉又が1991年に突然他界したあとも「ミス・ブランチ」は製造されましたが、高価でほとんど手作りということもあり、56脚(彼の享年)で製造中止となりました。
「ミス・ブランチ」は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、パリ装飾美術館などで観ることが出来ます。


ルノワール《薔薇》1910年
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ルノワール(1841~1919)

「芸術が愛らしいものであって何故いけないんだ?世の中は不愉快なことだらけじゃないか。」ルノワール

ルノワールはこの言葉の通り、愛らしい子供・花・楽しく集う人々を描いた作品を多く残しました。
明るく幸福感が伝わる「薔薇」が描かれています。タッチは、薄い絵の具を何度も塗り重ねられ、羽毛のように軽くて柔らかです。ルノワールの色、バーミリオン(朱色)の温かみが伝わる華やかな作品です。

《薔薇を持つガブリエル》1911年
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画面が盛り上がっているかのような肌のふくよかさとみずみずしさ、ゆるぎのない重量感を感じます。白の色遣いが絶妙で、ガブリエルの華やかさをより一層引き立てています。



井上有一「花」
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井上有一(1916~1985)現代の書家 文字の造形美を引き出す(文字を描く)

東京生まれ。美術の抽象表現主義に呼応した実験的な一字書の大作を発表し、書の世界に新風を巻き起こしました。サンパウロ・ビエンナーレ展など海外でも作品を発表しています。

かすれた線が陰線(白い線)と陽線(黒い線)を作り出し、字形に変化をつけながら背景の白い空間と融合しています。又大胆なトリミングがなされています。井上有一は、筆触の造形性と文字に備わった造形性を幅広く追及し、「アートとしての書」の確立を目指しました。



マネ《フォリー=ベルジェールの酒場》1882年
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マネ(1832~1883)

女性の後方は鏡なので、現実にはありえない構図的・空間的矛盾が生じていますが、絵画としての面白さ・効果を演出しています。当時すでにカメラの普及によって現実を忠実に再現する点においては写真に譲っていた画家にとって、絵画の持つ意義を表した作品と言えます。

グラスや薔薇の質感が、巧みな無駄のない筆さばきで描かれています。

テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

美を巡る「花」Ⅳ

【色々な花】

中川幸夫《闡(ひらく)》1976年
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中川幸夫(1918~  )香川県に生まれる。生け花作家

1951年に池坊を脱退後は、伝統的な生け花の概念を越えた創作活動を続けています。独創的な「花の命の美」を追求しているアーティストです。

「闡(ひらく)」は、一見すると肉の塊と見紛う赤くグロテスクな立体です。これは、4500本のチューリップの花を長い時間かけて腐らせて制作された作品です。中川は、アトリエで何日も花の朽ちて行く過程を見つめ、写真に残すことで完成させます。絵画・彫刻といった作品は、制作された時の状態で保存が出来ますが、限られた時を生きる花をモティーフにした作品を留める手段として写真が使われています。
コントラストの強い写真によって、一つの塊に圧縮された花の命の形が鮮やかにに表現されています。



モイ―ズ・キスリング《花瓶の花》1930年
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モイーズ・キスリング(1891~1953)ポーランド人 エコール・ド・パリの画家

1910年にパリに出ました。アルコール中毒、自殺など暗いイメージがあるエコール・ド・パリの画家たちの中で、明るく順調に画家生活を送ったキスリングでした。

《花瓶の花》はチューリップでしょうか?この作品の見どころは、何といっても赤と緑(補色)の色遣いにあると思います。そして黒がその補色の鮮やかさを更に引き立てています。花台の存在を示すラインがかすかに引かれていて、浮遊感を抑えています。
キスリングは、見たままを描かず、巧みな色遣いで花の美しさを強調しています。

キスリングは女性像も数多く残しています。

《青い服の女》
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魅力的な作品です。女性の腕が作りだす青いコートのユニークな形、女性の不確かな視線、さし色になっている首元の薔薇色、陶器のようにつるっとした白い肌、美しい光を放つ金髪、それらの魅力のすべてを包むように支える背景の美しい青色。塗りつぶさず、塗り残しのような所々の白色が、画面全体が平たんになるのを防いでいます。
眺めていて飽きない魅力がある作品です。



ゲーリー・ヒューム《無題》1997年 パネルにインクとエナメル
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ゲイリー・ヒューム(1962~  )

ロンドン在住。現代のイギリスを代表するアーティストです。

花のイメージを単純化した形態と色彩で平面的に描いています。その花の種類が何であろうと、ただ私達が持っている花というイメージが平板化され、インクとエナメルという物質によってさらに平板化されています。しかし、何か温かみや優しさを感じることもできます。このような作品が部屋の壁に掛かっていても、いいものだと感じます。

テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

美を巡る「花」Ⅴ

【色々な花】

マティス《マグノリアのある静物》1941年
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マティス自身が、「私のお気に入り」と語っていた作品です。

花や貝を貼り付けたように描いた平面的な空間構成。赤色の強さと美しさに目が引きつけられます。
マティスの赤です。テーブルとかクロスの色といった何かを示す説明的な色ではなく、強い造形表現のために使われる色彩としての明快な赤色なのです。
右上の花瓶下の小皿にわずかな奥行き感がある以外は、全てが立面で描かれていて、より平面的で装飾性が強調されています。
空中を浮遊するかのように並置されたモチーフは、画面の中を巡回しているようです。さらに、モチーフの一部が画面の端で切られている構図によって、外に向かう拡張性をも引き出しています。
また、「線」と「色彩」が主張し合いながら調和よく共存していると思います。つまり、線に合った色が塗られ、色に合った線が引かれていると思います。深刻さや力みを感じさせない線と色が、見る者の心を安らかにさせてくれます。
自然や物、人体、空間をいかに絵画的に表現するか、絵画の生成に関する問題と真剣に取り組んだ画家マティス。彼が切り開いた絵画の革新的な表現法は、今日も多くの芸術家が受け継ぎ様々な展開を見せています。  


ベルナール・ビュフェ(1928~1999)《ユリ》
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ベルナール・ビュフェは、フランスの具象絵画を代表する画家です。日本でも1960年代に人気を博した画家です。

鋭く強い線で描かれたユリです。黒い針金のような輪郭線が大胆に引かれています。ユリの花はハサミで切り抜いたような印象を受けます。モノトーンに近い色遣いが、形態の面白さをより引き出しているように感じます。
この作品は、とても調和の取れた作品だと強く感じます。
テーブルクロスの垂れ下がった輪郭線だけの三角形が(白く塗りつぶしてあると、異なる印象になると思います)、細い足の丸テーブルに安定感をもたらし、画面全体のバランスをとっています。ユリの花のそれぞれの向き、花瓶の高さや、テーブルのわずかな傾きも、画面のバランスをもたらす要素となっています。又、ビュフェの作品のサインは、ここという場所に書かれていて、作品の一部となっています。

黒く鋭い決定的な輪郭線によるビュフェ独自の描き方は、見る者に絵画の面白さを教えてくれます。



テーマ:アート・デザイン - ジャンル:学問・文化・芸術

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