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アート/ART 

ART PROGRAM K・T 

マーク・ロスコⅠ

11月15日の第26回やさしい美術鑑賞講座では、抽象表現主義の中でも色面で構成された抽象画について紹介しました。

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マーク・ロスコ《ナンバー61 赤褐色と青》1953年 294cm×232cm

抽象表現主義は、大きな身振り(アクション)や荒々しいタッチによって描き出されるアクションペインティングと、色彩が強調された巨大な色面によるカラー・フィールド・ペインティング(色面絵画)に大別されます。

アクション・ペインティング (大きな身振りで激しい筆の動きによる線的な表現)
  ジャクソン・ポロック、 ウィレム・デ・クーニング、 フランツ・クライン

カラー・フィールド・ペインティング (大きく拡がる色彩による表現) 
  マーク・ロスコ、 バーネット・ニューマン、 モーリス・ルイス、クリフォード・スティル


カラー・フィールド・ペインティングとは

「色面絵画」「色彩による場の絵画」と訳されます。抽象表現主義の中でも、大きく身体を動かし、
激しい筆致で描いたアクション・ペインティングのポロックやクーニングらの線的な表現とは異なり、見る者を包み込むような大きく拡がる色彩(色面)によって、精神性の高い抽象画を描いたマーク・ロスコ、バーネット・ニューマン、クリフォード・スティル、モーリス・ルイスたちの作品をカラー・フィールド・ペインティングと呼びました。

カラーフィールドペインティングは、大きく拡がる色彩を体感して、何が描かれているのかを言葉で探るのではなく、意味にこだわらずに「感覚」や「感性」で見る、色彩や形を体験するアートです。

マーク・ロスコ(1903~1970)
抽象表現主義のカラーフィールド・ペインティングを代表する作家の一人。1903年、ロシアのドヴィンスクという町にユダヤ人の薬剤師の息子として生まれました。1913年にアメリカに一家で移住し、24年ニューヨークのアート・スチューデント・リーグに学びました。33年初の個展を開く。当初はシュルレアリスム風のイメージによる作品を描いていましたが、46年から「マルチフォーム」と呼ばれる茫洋とした色面の作品を描き始めました。49年には「ロスコ様式」と呼ばれる二つか三つの矩形の色面を縦に重ねた独自のスタイルを創出しました。

波打ち際の緩やかな渦巻き44年_convert_20091116232353
マーク・ロスコ《波打ち際の穏やかな渦巻き》1944年 
初期のイメージによる作品

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マーク・ロスコ《白と赤の上の紫、黒、オレンジ、黄》1949年
207cm×167cm
人の背丈を越える大きなキャンバス、色彩によるオールオーヴァー(全体を覆う)な画面、絵を見るより絵(色彩)に包み込まれるような感覚に捉われます。薄く溶いた絵の具の重ね塗りによって作り出された透明感のある色彩は、画面の奥から光を発しているかのような深みのある輝きを画面にもたらしています。静かで瞑想的な画面は、見る者の感情に働きかけ精神性を強く感じさせます。

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作品の前のマーク・ロスコ

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《ホワイト・センター薔薇色の上の黄、ピンクラベンダー》1950年
ロスコの色彩は物の表面の色ではなく、視線の奥から、遥か遠くから立ち現われてくる色なのです。人は掴みきれない奥の深い色に心が動かされます(夕日、青空、海の色)。たとえば海の色がペンキを塗ったような状態だったらどうでしょう?海の底から湧きあがってくるような色彩だから感動するんですよね。
また、矩形の輪郭や色面の境界がぼかされていることが、見る者に「柔らかさ」「安らぎ感」を与え 作品を受け入れやすくしています。
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テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

マーク・ロスコⅡ

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マーク・ロスコ《赤の上の黄褐色と黒》1967年

無限の拡がりが暗示され、見る者の奥深い感情を強く揺さぶる

マーク・ロスコの作品の特徴
 
 ・巨大サイズの縦長の画面に、二つか三つの輪郭をぼかした矩形を縦に並べた単純な画面構成。
 
 ・ロスコ・スタイルと呼ばれる作品はすべて左右対称の構図がとられ、画面に安定感があります。
 
 ・形態よりも色彩の持つ表現力が重視され、色彩同士が響き合うように配色されています。
 
 ・【呼吸する色彩】と言われる色彩の表現技法
    「薄塗り」と「重ね塗り」が、下地が生かされた濃淡のある深い色彩を作り出しています。
    何度も塗り重ねて厚みをつけた部分とそうでない部分によって作られた半透明の色の層の
    違いが画面に振動を起こし、色彩がキャンバスの中で呼吸しているように感じさせています。

絵画体験を通して「悲しみ、悦び、絶望といった人間の基本的感情」を伝えようとし、又色彩の場を作り出すことで鑑賞者に宗教的な、崇高な体験をもたらすことを意図し、それを作品で表現しました。

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マーク・ロスコ《グレーの上の黒》1969~70年

1969年から、画面から明るく華やいだ色が全て消え、それに代わって黒や灰色などの暗い色を使い、上下に水平に二分しただけの作品を描くようになりました。「もうこれ以上先に進むことはできない、絵画の限界、表現の果てに自分は辿りついたのだ」というロスコの暗澹とした気持が描かせた作品だと思います。この年ロスコーは自らの命を絶ってしまいます。

川村記念美術館(千葉県佐倉市)マーク・ロスコの作品7点が、《ロスコ・ルーム》で鑑賞できます。
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1958年ロスコはニューヨークのシーグラム・ビルのレストランの壁を飾る作品を制作したが展示には至りませんでした。30点残る「シーグラム壁画」の内7点が千葉県の川村美術館に「ロスコルーム」として、瞑想的な雰囲気を漂わせながら特別に展示されています。
     
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《シーグラム壁画》1958年265.8×379.4cm
シーグラム壁画1959年_convert_20091117202032
《シーグラム壁画》1959年266.7cm×455.9cm

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