
フリードリヒ(1774~1840)19世紀ドイツ・ロマン主義の画家
ロマン主義…古典主義の理念や美学に縛られることなく、理性的な合理主義に対抗し、個人の感性や情動、
空想や幻想に重きをおいた芸術様式 “理性より感情を重視”
フリードリヒの作品の主題は「神秘と幻想」です。
「リーゼンゲビルゲ山の朝」では、広大な自然を通して、観る者に神の存在を感じさせています。
広大な風景や光に、精神性や象徴性を与え、崇高さや自然に対する畏怖の念を描き出しています。

山頂の十字架をクローズアップさせると二人の人物が象徴的に描かれ、物語性(「自然の崇高さ」「神秘」「人間の非力さ」「存在の虚しさ」)を感じます。
1933年ドイツ・ベルリン大学に留学した東山魁夷は、フリードリヒの作品に出会い、「風景の中に精神性を見い出すこと」に自分の方向性を見出しました。
東山魁夷《残照》1947年

アンドリュー・ワイエス《闖入者》1971年

アンドリュー・ワイエス(1917~2009)
アメリカ絵画の正統な後継者 アメリカの国民的画家と呼ばれ国民から幅広く支持されている画家です。
「闖入者」は、川の岩の上に佇む愛犬ネリ―を描いた作品です。闖入者は、それまで静寂だった風景に変化をもたらします。せせらぎの音が聞こえ、小さな泡が鏡のような水面にかすかな流れを作り出しています。画面奥上部に、わずかな空と木を描くことで奥行き感が深まり、静寂のふくらみを感じます。
「ある風景を描く時、眼に映るすべてを描きません。多くのものをしばしば省略します。感情に訴えるものを取り出し、そのモティーフが浮かび上がるように焦点を当てるのです。その場を離れても、心に残っているものだけを描きます」 ワイエス
ワイエスは現実のすべてを描くのではなく、対象から得た感動をより強調するために不必要と思われたものを省略しています。若い時から既に、対象をそっくりそのまま描くだけでは、そのものが引き起こす感動を画面に表現できないことに気付いていました。
「絵を描くきっかけは、胸が一杯になった時に生まれます。それはほんの一瞬です」 ワイエス
自分の心の奥深いものが動かされて初めて制作に取り掛かりました。ワイエスは、「フィーリング」「エモーション(感激・感動)」といった言葉をしきりに使いました。
犬塚 勉《縦走路》1985年アクリル

《深き渓谷の入り口》1988年

犬塚 勉(1949~1998)
小・中学校の美術教師をしながら、自然の風景を描き続けた夭折の画家
「自然は命がけの厳しさを要求する。並の生きる意志で立ち向かえる相手ではない。自然の命、その厳格で絶対的な法則が春の野の一輪のスミレの花にさえ充満している。
本当にそれが見えるか。真冬の北岳の稜線の風、ピッケルで辛うじて体を保持しながらピークを目指した。あれが風である。」(1988.4.17 犬塚勉 制作ノートより)
自然を徹底的に見つめ、リアリティに徹して再現しました。小さな石ころ一つにも手を緩めることなく描きました。そうすることが自然の厳しさに対する犬塚の答えだったのではないでしょうか。
犬塚は「水が描けない」と言って谷川岳に入り、帰らぬ人となりました。
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