アーティストの観念や思考が作品を成り立たせ、観念の表明としての「形」が作られる。
【インストラクション・アート】のフォルム
観客の手によってその形を変えていくアート
フェリックス・ゴンザレス=トレス《無題・大衆の意見》1991年

フェリックス・ゴンザレス=トレス(1957~96年)キューバ
美術館の隅に積まれたキャンディの山です。
アーティストの指示(キャンディを持ち帰ってもいい)によって、キャンディの山の形がどんどん変わって行きます。観客が作品に関わることによって作品が成立しているアートです。
キャンディはキャンディ・ポットの中や、お菓子売り場にあるものという固定観念がありますが、美術館に置かれた瞬間にアート作品となり、しかもアーティストのインストラクションにより、その形を変えて行く行為に参加することが出来るのです。
【ランド・アート】のフォルム
ロバート・スミッソン《スパイラル・ジェッティ(螺旋形の突起)》1970年
_convert_20101007003512.jpg)
ロバート・スミッソン(1938~1973)は、グレートソルト湖に石と土を積み上げて、幅約5m・全長457mの螺旋状の堤防を制作しました。大地への痕跡というには、非常に大きな作品です。
ランド・アートのコンセプトは、「オフ・ミュージアム」「オフ・ギャラリー」です。美術館やギャラリーから抜け出して、石・木・砂・土などの自然の素材を使い、湖や砂漠や平原などの特定の大地に作品を制作するアートです。時間の経過と共に破壊・崩壊が起き、形が徐々に崩れて行っても作品であり続けるのです。
しかし、私達鑑賞者はランドアートの現場に赴く事はなかなか困難なことであり、結局は写真などが展示された美術館で鑑賞するという矛盾も抱えています。
【もの派】のフォルム
関根伸夫《位相・大地》1968年

円柱の穴を掘り、掘り出した土を穴と同じ大きさの円柱に固め、穴の横に並べただけの作品。何も意味が無い、あるがままの土をアートに変えています。
もの派のコンセプトは、自然の物(例えば土や木や石)や、素材として扱われるもの(紙・金属・ガラスなど)を造形的に加工せず、本来の物としての存在を問い直すことです。つまり、人間によって意味づけられた(石垣としての石、床としての木など)物から、意味や目的をはずして、物と物との関係・物と人間との関係・物と社会との関係について問い直し、「新しい物のあり方」を提示して作品としました。(川原に転がっていた石を画廊に持ち込むことによって、新しいもののあり方を問い直す)
【梱包芸術】のフォルム
クリスト《ポン・ヌフ》1985年

クリスト(1935~ )ブルガリア
自然や建造物を布で覆ってしまうインスタレーションです。公園の木々(スイス)・海岸(オーストラリア)・ドイツ国会議事堂・橋(パリ)など、一つのプロジェクトに長い年月を費やして実行し、短期間の展示の後撤収が行われます。ザ・ゲーツ(門・セントラルパーク)というプロジェクトでは、交渉などに約25年を費やしたプロジェクトもあります。
クリスト自身が「覆って美しいものしか、覆わない」と言っているように、布で覆い尽くされたポン・ヌフは美しく、覆われることによって新たに別の形が出現し、私達に物の在り様を問いかけてきます。布は2週間で取り外されました。
スポンサーサイト