フランシス・ベーコン《Seated Figure》1977年

フランシス・ベーコン(1909~1992 ダブリン(アイルランド)出身)
抽象絵画が全盛の時代、その流れとは関係なく、具象絵画を描き続けた画家。
椅子に座るデフォルメされ歪められた肉体。幾何学的で舞台のような空間の中で、じっとこちらを見つめています。何か薄気味悪く嫌な感じが漂い、こちら側の神経を逆撫でするような視線です。足からは何か動物的なものが生えていて、増殖していくような不安感も覚えます。ベーコンは「自分が惹かれるイメージを再現しているだけ」と述べています。再現された彼のイメージは、私達の視覚よりも神経に強く訴えかけてきます。
ベーコン《「教皇インノケンティウス10世の肖像」(ベラスケス作)を基にした習作》1953年

ベラスケスが描いた教皇の肖像画を元に、ベーコンは50点程の習作を描いています。
ベーコンは、幼い時から強権的な父親の虐待を受けながら成長したこともあり、威厳と権力の象徴である教皇の肖像画に興味を示したという解釈もあります。身動きが取れなくなり恐ろしい形相で何かを叫ぶ男。不安や薄気味悪さを増幅させるように描かれた何本もの刷毛の痕。私達鑑賞者は強烈なインパクトに、目が離すことが出来ないのです。
ベラスケス《教皇インノケンティウス10世の肖像》1650年

ベラスケスが描いた肖像画の中でも最高傑作の一つに挙げられます。教皇インノケンティウス10世は、当時のキリスト教圏の絶対的な権力者でした。
ロバート・メイプルソープ

ロバート・メイプルソープ(1946~89 アメリカの写真家)
花、ポートレート、ヌード、セックスの四つをメインテーマとして作品を制作しました。彫刻的な筋肉の美しさや人体のフォルムの美しさを十全に引き出すポーズと完全な美を追求した構図は、冷徹な視線から生まれた独自の美意識によるものだと思います。
人間の筋肉というイメージから離れ、美しいフォルムを表現したブロンズの彫刻のようです。
ロバート・メイプルソープ

花というイメージより、一つの美しいフォルムとして捉えた写真です。
《ワンポインティング》1947年 高さ179cm

ジャコメッティ(1901~66)スイス出身の彫刻家 絵画や版画も多く残しています。
1922年にパリに出て、ブールデルのもとで彫刻を学びます。シュルレアリスムの影響が強い作品を制作しますが、第二次大戦後は余分なものをそぎ落とした独自の作品を制作しました。
西洋の伝統的な彫刻、つまりボリューム感を基本とする彫刻とは正反対の、それまでの彫刻の歴史には見られないような細く長く引き伸ばした人物像が特徴の作品を制作しました。
「対象をとらえようとすればするほど彫刻はどんどん小さくなっていった。細くなければ現実に似ない」(ジャコメッティの言葉)
ジャコメッティ《ディエゴの胸像》1952年

弟のディエゴをモデルにした作品を何点も残しています。繊細でもあり力強くもある指の痕が残されていています。ジャコメッティの作品は、指跡の一つ一つの集積によって成り立っています。
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