■ 遠近法を用いない空間表現
モダンアートの画家たちは、ルネサンスからの遠近法に頼ることなく、造形性が最優先された平面的な空間構成によって描き始めました。
ゴーギャン《アルルの病院の庭にて》1888年

遠近法を用いず、複数の視点(近景は正面から 遠景は上から)で描かれています。空間は色面で構成され、モチーフのディテールは無視されて単純化され平面的です。装飾性が強められています。
ゴーギャン《三匹の子犬のいる静物》1888年

遠近法を無視して、視点を変えて下から順に積み上げられています。
さらにモチーフは単純化され、大きさは非現実的です。そして画面に散りばめた印象があります。
輪郭線で囲まれたモチーフは、平面的に塗りつぶされています(クロワゾニスム)





ゴーギャンによる新しい絵画の流れ~写実から抽象へ~

遠近法・モチーフの質感や固有色の再現・明暗法などから離れ、色彩も線も形も自分(画家)が表したいように描く。際立つ色彩の組み合わせや、単純化された形態が織りなす装飾的な美しさは、見るものの感覚に訴えかけてきます。
画家の内面を表し、人の感覚に強く訴える色彩の表現は、抽象絵画への第一歩となりました。
ゴーギャン以後、自然から色彩を切り離したフォーヴィスム(野獣派)の画家たちによって、【赤色や青色の木】がヨーロッパ絵画に出現しました。





セザンヌ《キューピッドのある静物》1894年

歪んだ空間
リンゴが転げ落ちそう!(奥へせり上がって見える床)そして後ろに立てかけられた絵画から青い布がテーブルに滑り込んでいます。
遠近法を全く無視した、不思議なゆがんだ空間です。
ピカソ《アヴィニョンの娘達》1907年

前後する空間
キュビスムの誕生を告げる作品です。「形」の描き方に大変革をもたらしました。
「美」と「醜」の区別を打ち壊し、20世紀の美の新しい規範を創り出して大きな影響を与えました。
量感を表すための影や、空間を表すための遠近法が無視されています。
前後感が不確かな不思議な空間が創り出されています。人物間の空間が前に出てくるようでもあり、後退するようにも見えます。
人物表現は、一人の人物のいくつもの姿や形が、一人の人物として組み立てられ、「多視点による描写」というキュビスムの手法で表現されています。
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