カラヴァッジョ《メドゥーサの首》1601年 ウフィッツ美術館

カラヴァッジョ(1571~1610)
元は美しい乙女だったというのが信じられない程の形相。髪は、絡み合いうごめく蛇の群れ。絵画史上、口(歯)を描いたとして有名な作品です。発せられる叫び声と共に、メドゥーサが画面から飛び出してくるような迫力のある作品です。
絵画史上「口と歯」が描かれた作例は珍しく、他にはドガの《黒い手袋の歌手》があります。
ドガ《黒い手袋の歌手》1878年

黒の手袋とドレスの縁取りの黒のファー、そして背景の黒がバランス良く配されて印象を強めています。下方からの人工的な光に照らし出された歌手の姿が、臨場感にあふれています。
パルミジャニーノ《凸面鏡の自画像》1524年 ウィーン美術史美術館

当時「鏡」と言えば凸面鏡で、現代のように平面鏡ではありませんでした。鏡に映り込んだ天井・壁・窓は大きく湾曲して描かれている中、パルミジャニーノ自身(21歳)の顔だけは歪められることなく、少年のように初々しく知的な雰囲気を漂わせています。直径24cm程の凸面に加工されたパネルに描かれていますが、誇張され大きく描かれた右手の効果により、画面の外にせり出してくる錯覚を感じます。
パルミジャニーノ(1503~1540)は、イタリアのマニエリスムの画家です。マニエリスムは、ルネサンスからバロックへ移行していく過渡期の美術様式で、歪んだ遠近法・誇張された形態や色彩を特徴として、非現実的な表現をした様式です。
パルミジャニーノ《首の長い聖母》1534-39年頃

聖母の身体が極端にS字状に引き伸ばされています。さらに膝にすっぽり包み込まれるようにキリストの体も異様に長く引き伸ばされています。右下には、歪んだ遠近法で未完成のままの聖ヒエロニムスが小さく描かれています。マニエリスムの特徴がよく表れている作品です。
この「首の長い聖母」に強く影響されて描かれたのが、モディリアーニの「エビュテルヌ」です。
モディリアーニ《ジャンヌ・エビュテルヌ》1918年 グッケンハイム美術館

温かみのある黄色いセーターが示すS字のボディーラインが美しく安定感を感じます。
フランク・ステラ《アカハラシキチョウ》1979年 198.3×317.6×88cm 川村記念美術館

多層的な空間構成によるフランク・ステラのレリーフ絵画
フランク・ステラ(1936年・米)は、平面上の見せかけの奥行きではなく、本物の奥行きがあるレリーフ絵画を制作しました。鑑賞者の空間に、画面から“せりだす奥行”を作り出しました。
1970年以降のステラは、絵画は平面でなければならないという半ば常識を捨て去り、多種の素材を組み合わせた、立体でもない絵画でもない作品を制作しました。それぞれ複雑な形をしたパーツを複雑に組み合わせて、今までにない造形空間を作りました。
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