「ロレッタ・ルックス」(1969~ )
《Dorothea》2001年

《Spring》2001年

《Hugo and Dylan》2006年

《The Fish》2003年

《Drummer》2004年 58×51

《The Walk》2004年 51×66

インパクトを受け、時間が止まる感覚をもたらす写真です。一見すると、スーパーリアリズムの絵画かCGで作られた画像ではないかと思わせる、不思議な、奇妙な、人工的な独特の世界です。
ロレッタ・ルックスの手法は、デジタルカメラで撮影した友人の子供たちと、別に撮った風景写真や描いた背景とをデジタル合成して、異化されたイメージを生み出すものです。
柔らかく優しい色彩、上質な仕立ての良さそうな服、子供たちの肌や髪も美しい。またシンプルで深い遠近法の構図による子供の存在感、小道具(壁紙・バッグ・小物)の計算された心地よい位置。一見心地よい雰囲気の中で、何か虚ろな瞳で凝視する写真の子供たちは、私たちの知る、街や公園で遊ぶ子供たちではない。どこか違う星から訪れたのではないかと思わせるような不思議なイメージの中に存在しています。
彼女が「私は、失われた楽園のメタファー(暗喩)として子供たちを被写体としている。」と話しているように、愛らしさと不気味さ、心地よさと不安が共存する子供たちのポートレートです。
《Selfportrait》2007年

ロレッタ・ルックスは、1989年20歳の時、ベルリンの壁崩壊直前に旧東ドイツのドレスデンからミュンヘンに移り住みます。1990年から1996年まで、ミュンヘン造形芸術アカデミーで絵画を学んだあと、写真へ転向しました。彼女は子供時代について「この世の醜さに苦しんだ」と話しています。その時代の記憶が、愛らしさと不気味さ、心地よさと不安といったアンビヴァレント(相反する感情を同時に持つ)な感情の反映として表現されているのではないでしょうか。
不思議な感覚を抱かせる日本のコンテンポラリーアーティスト加藤美佳の手法
加藤美佳《Pansies》2001年 油彩・キャンバス 235×187

自分がイメージした女の子の人形を実際に作る→作った女の子の人形を写真に撮る→撮った写真をキャンバスに拡大コピーする→それを正確に細密に絵の具で描き出す。この四つのプロセスを経て加藤の作品は作り出されています。可愛い少女を直接描くのではなく、写真に映った女の子の人形を描いている(写真をキャンバスに描いている)。作ること、撮ること、描くことから生じる表現の差異を作品化し、現実とフイクションが入り混じった不思議な感覚を抱かせる作品を加藤は作っています。