アメリカ生まれの美術に最大評価を与え、画家たちを指導し、理論的に擁護した美術評論家がいたということは前回ご紹介いたしました。
今回はその美術評論家 クレメント・グリーンバーグをご紹介いたします。

アメリカを世界の中心にした、20世紀最大の美術評論家
アメリカ独自の美術「抽象表現主義」をヨーロッパの近代美術を受け継ぐ正当な美術と評価し、理論的に擁護すると共に、画家たちを指導し適切なアドバイスによって彼らを支えていました。抽象表現主義を「世界一」の座に押し上げ、アメリカを世界の美術の中心にした評論家です。「フォーマリズム」と呼ばれる批評法のあり方を完成させ、その後の美術批評に大きな影響を与ました。日本では美術評論家の藤枝晃雄がグリーンバーグ研究の第一人者です。
抽象表現主義はなぜ美術史上もっとも進歩した絵画芸術か
ルネサンス以来絵画は、「色彩的な絵画」と「線的な絵画」が交互に現れながら進んできました。そして近代絵画に至ると、絵画の本来の要素である《平面性》の追求が、純粋な絵画のあるべき姿であるという方向性が示されました。つまり、遠近法・陰影法によって奥行きや量感を表現すること(イリュージョン)を排除することで平面的に、又物語性を排除することで抽象的なものになって行きました。
このように、平面的で抽象的な抽象表現主義は美術史上もっとも進歩した絵画芸術となりました。
色彩的な絵画‥色彩を抜いてしまうと絵画として成り立たなくなる。

モネ「睡蓮」1916~19年
線的な絵画‥色彩を抜いても、輪郭線をたどることができる絵画。

ラファエッロ「牧場の聖母」1506年
グリーンバーグの「フォーマリズム(形式主義)批評」とは?
フォーマリズム批評は、何が描かれているか(内容・主題)に重きを置く印象批評とは異なり、如何に描かれているか、つまり構造・線・色彩・形のような、視覚的な美術の要素のみで作品の良し悪しを判断する美術批評なのです。印象批評は、描かれている人物や物語性、さらに描いた画家のバックグランドや精神状態までが批評の対象になるのに対し、フォーマリズム批評では、どんな画家がどんな精神状態で何を描いたかは、一切批評の対象にならないのです。
次回は、グリーンバーグによって称揚された画家ジャクソン・ポロックとその作品をご紹介します。
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