《女と金魚》1921年

画商から「金魚の巨匠」と言われるほど、マティスは金魚をモティーフに何枚も作品を制作しました。その作品の中でも珍しく量感のある写実的な表現で描いています。金魚を無心に見ているのか物思いにふけっているのか‥少し抑え気味の色彩が、この作品の雰囲気をより一層強めています。
オダリスクを描く
《グレーのキュロットのオダリスク》1927年

《赤いキュロットのオダリスク》1921年

オダリスクとは中近東のハ-レムの女性のことです。トルコなどへの旅行の後マティスは精力的にオダリスクの作品を描いています。女性がテーマと言うよりも、オリエンタルな雰囲気を描きだしたかったかのように、壁紙や敷物などが大胆に装飾的に色彩豊かに描かれています。
《模様地の中の装飾的な人物》1927年

床の絨毯は遠近法よって表わされていますが、壁である壁紙が平面的に描かれているため、空間に歪が生じています。
その空間の歪みを和らげるために、人体を量感的に描きながらも、本来は丸みのある背中を直線で表わすなど平面化(装飾化)が図られています。
三次元の立体物や空間を、どのように絵画の平面と結びつけるのか。絵画の平面性を損なうことなく、立体と平面(装飾)を調和させるための工夫が見られる作品です。
次回は、「色彩・形態の単純化」、そしてマティスのもう一つの魅力「デッサンと版画」について紹介します。
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