芸術活動の集大成 「切り紙絵」
_convert_20091226214601.jpg)
ホテル・レジナで紙を切り抜くマティス

1941年72歳の時に、マティスはリヨンで十二指腸癌の大手術を受けました。手術は成功し奇跡的な回復を遂げますが、一日の多くの時間をベットで過ごさざるを得なくなりました。体力的にも油彩画の制作は困難となり、そこでやむなく比較的体力のいらない、以前構図を考える時に手がけた「切り紙絵」を始めました。マティスの助手たちが、彼の指示で切り紙を下紙にピンで止め、彼の満足のいく配置になると糊付けをするというスタイルをとりました。
新しい表現に対する情熱は衰えることく、ベッドや車椅子にしばられながらも制作は続けられ、「切り紙絵」はマティスの生涯にわたる制作活動の集大成となりました。
切り紙絵
水彩絵の具で着色した紙を鋏で切り抜き、貼り合わせる。
「切り紙絵は色彩で描くことを可能にしてくれた。輪郭線を引いてから中に色を置く代わりに、いきなり色彩で描くことができる」 マティス
色彩と線、どちらも並び立つ表現を追求してきたマティスにとって、切り紙絵は、切り抜くことで色彩と線が同時に決まり、両方を満足させる表現方法でした。
版画集【ジャズ】より

1947年版画集として出版。生涯テーマとしてきた色彩と形の単純化が、結晶化されています。
サーカスを中心にしたテーマで、即興的でリズミカルな表現であることから、その版画集は【ジャズ】というタイトルで出版されました。20枚の版画と、マティスの文章から成っています。
《空中ブランコ》

《イカロス》

《ピエロの埋葬》

《サーカス》

版画集【千夜一夜物語】
_convert_20091224193916.jpg)
【切り紙絵による本の装丁】

「マティスその芸術と大衆」の表紙
マティスのデザイン感覚は、現代でも充分通用しています。今日、日比野克彦に見られる表現の「単純化と装飾性」は、マティスによってその下地が作られました。黄色と青色の対比、黄色と黒色の対比、この二つの色彩の対比の組み合わせが、表現を活性化させています。
日比野克彦《H・table》1986年


マティス《ヴェルヴの表紙》1948年
切り紙絵の代表作
《王の悲しみ》1952年 292×386cm パリ国立近代美術館

色彩同士が強く響き合い、力強く調和している。舞い上がる黄色い葉が、王が奏でるギターのメロディーを感じさせ、画面に動きを作り装飾性を高めています。
《ブルー・ヌード》1952年
彫刻的なポーズを青と白の二色だけで表現した傑作です。4つのバージョンで制作されました。
バージョンⅠ

バージョンⅡ

バージョンⅢ

バージョンⅣ

スポンサーサイト