《コンポジションⅧ》1923年

点、線、面、○△□の幾何学図形だけで構成され、それらの組み合わせによってリズムが作り出されています。
カンディンスキーは宇宙という概念に結びつく「円」を重要視しました。静と動、収縮と拡散といった「対立を統合する円」や円の無限に変化する性質が表現されています。
10年前に描かれた《コンポジションⅦ》

10年の間に抽象をより深めて行った変遷を感じ取ることが出来ます。
《セブラルサークル》1926年

カンディンスキーにとって円は重要なモティーフでした。色とりどりの円が、画面に拡がり、深さ、リズム、浮遊感
を感じさせています。円の大きさや位置関係、構図、配色が周到に計算され幾度も考察が加えられたことが窺われます。多くの造形言語を語るこの作品は、カンディンスキーが追及してきた“抽象絵画”の一つ完成を示していると思われます。幾何学的抽象に転じたとはいえ、どこか抒情性を感じさせる作品です。
《コンポジションⅩ》1939年
「コンポジション」シリーズの最後を飾る作品であす。追及してきた様々な抽象的な表現の総決算といえる作品

巧みに配された色彩が、輝くような視覚的効果を高め、切り紙絵を思わせるくっきりした形は明快さを感じさせます。
四方に拡がる動きが、計算された構図で生み出されています。
形の重なりが、様々に入り組んだ空間を作り出し、画面を面白く快活にしています。散りばめられた小さな四角形がさらに華やいだ画面を演出しています。
《空の青》1940年

1933年からパリに住み始めて、カンディンスキーは幾何学的な表現を捨て去り「生物を連想させる抽象」を描くようになりました。想像力によって生み出された奇妙な形をした生物らしきものが空中を浮遊しています。鑑賞者がカンディンスキーの作品から一番多く受け取る感じは、この浮遊感です。1910年代の作品に比べ、一つ一つの形態が的確に描かれており、カンディンスキーの関心が個々の形に向けらたことが窺えます。背景は、自らが「天上の色」と語る青色が使われ、空間性を高めています。「絵画から対象を無くすこと」で始められたカンディンスキーの抽象絵画の追及は、画面に生物を連想させる有機的な形態を描くことで完結を見せています。
次回は幾何学的抽象の画家、モンドリアンを紹介します。
スポンサーサイト