ピート・モンドリアン (1872~1944年)オランダ 抽象絵画・新造形主義
1872年オランダに生まれ、アムステルダムの美術学校で学んだモンドリアンは、1911年パリにアトリエを構えました。当時の前衛芸術キュビスムに触れ、具象的な表現から完全な抽象に移っていきました。1917年オランダの芸術運動に参加して自ら唱えた「新造形主義」の原則に従い、三原色と無彩色、水平線、垂直線による幾何学的抽象絵画を創始しました。
【幾何学的抽象の極限”と言われるモンドリアンの作品の特徴】
画面から非本質的な要素を取り去り、ギリギリまで切り詰めた表現
赤、青、黄(色の三原色)と白、黒、灰色の無彩色だけを使用した表現。
「水平線」と「垂直線」によって作られる格子構造(グリッド)で描かれていて、画面は全て非対象で中心が無く、隅々まで同じ張りを持つ均一な空間で描かれています。作品の色と線が画面の外の空間とつながっています。
【何が表現されているのか】
目の前の世界を単純化していくと、すべては普遍的なものであって、水平線と垂直線で表現される。モンドリアンの世界認識
「宇宙全体を支配する構成原理」と「普遍的で最も基本的な世界の原理」を表現しています。
【水平線と垂直線の構図に至るまでの抽象化のプロセス】
《赤い木》1908年




《灰色の木》1912年


単純化と平面化が進んでいることが分かります。


《花咲くリンゴの木》1912年 さらに簡略化が進み、樹木は垂直線と水平線と円弧で表現されるようになりました。




《黒と白のコンポジション》1915年

水平線と垂直線だけで構成され、他の要素が排除された抽象絵画に到達する。
《赤、黄、青のコンポジション》1930年 45cm×45cm

「コンポジション」のシリーズの中で最も知られた作品。極端に画面上の要素を切り詰め、説明的なものが一切排除されています。画面を支配するのはバランス感です。赤、青、黄の配色関係、白いスペースのとり方など、これ以上の組み合わせが無い程の決定的な表現となっています。左の短い水平線は他の線に比べ太く引かれており、赤色の色彩力に対抗しています。中心がない非対称の画面で、色彩と線が作品の外の空間に拡がり結びつく新しい絵画空間が作り出されています。
《黄・赤・青と黒のコンポジション》1921年

《コンポジション》1922年

《ニューヨーク・シティⅡ》1942年~44年 119cm×115cm

1940年、戦火を逃れてニューヨークで暮らすモンドリアンに、大都会は大きな刺激を与えました。新しい環境やみなぎる都市の活力は、新しい抽象造形を追求するモンドリアンを新しい表現に向かわせました。この作品では、タテ・ヨコの線にテープが使われており、アメリカでの新しい試みとなっています。赤、青、黄の三色の線が織り込まれたように引かれ、平面に浅い立体感が作り出されて鑑賞者に新しい視覚体験を提供しています。
《ブロードウェイ・ブギウギ》1942年~43年 127cm×127cm

モンドリアン晩年の代表作。摩天楼が立ち並ぶマンハッタンの都市景観や、幾何学的な碁盤眼状の区画に触発されて制作されました。ブギウギは当時流行したジャズ音楽でです。画面を分割する黒い線が消え、赤、青、黄がリズミカルに並び線を作り出しています。色の重なりによって生み出された前後感が動感に結び付き、快活さと楽しさが強く感じられる作品になっています。モンドリアンが創出した幾何学的抽象表現は、デザインの世界にも大きな影響を及ぼしました。
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