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アート/ART 

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ピカソⅣ「キュビスムとは?」

キュビスム(立体派)   20世紀の大きな視覚革命

セザンヌの影響を強く受け、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックが、20世紀初頭(1908年~1918年)に始めた視覚上の革命的な美術表現。1908年のブラックの個展について美術評論家のルイ・ヴォークセルが「フォルム(形)を軽視して、幾何学的な図式や立方体(キューブ)に還元している」と評論したことや、アンリ・マティスがブラックの作品を見て「小さな立方体の集まり」と述べたことにキュビスムの名称の由来があります。 
                                   *キューブは立方体を表すフランス語 


キュビスムの表現法 

    一つの視点から複数の視点(同時的視覚)へ

・全く異なる角度(複数の視点)から見た物の形を一つの画面に描き出す。
・断片的にした形(平面)を、幾何学的な形に還元(単純化)して表現する

【遠近法による従来の表現法】では、一つの視点による描写のため、最高でも三面しか描けません。

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【キュビスムによる表現法】では、

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視点を移動して色々な位置から見る。そして分析する。


平面に断片化して再構成する。展開図の様な表現になります。
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図2


図1

展開図にすると全ての面が表せます。サイコロというものが何であるのかが良く分かります。

キュビスムの時代区分 表現の変化によって分けられます。

セザンヌ的キュビスム(1907年)
  ・対象を立方体を中心にした単純な形態に解体
分析的キュビスム (1909年)
  ・多視点の導入  ・対象を様々な面に分解  ・分解した面を再構成 
総合的キュビスム (1912年頃) ・コラージュ、パピエコレの導入
ロココ的キュビスム(1914年頃) ・緑色を基調とした装飾的な表現
  
キュビスムの先を行く、セザンヌの多視点による絵画

セザンヌ《果物かごのある静物》1890~1895年
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ピカソのキュビスム時代の始まりを告げる作品

「美」と「醜」の区別を打ち壊し、20世紀の美の新しい規範を創り出して大きな影響を与えました。

アヴィニョンの娘達
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1907年 244×234㎝

25歳のピカソがいかにして美術史に自らの名前を刻むのか、アヴァンギャルド(前衛芸術)の旗手としてまだ誰も見たことのない絵を描こうと、並々ならぬ意欲を持って挑んだ大作です。描かれた当初、その革新的な表現を誰も理解することができず、友人や画家仲間の間では「ピカソは気が狂った」とさえ言われました。1916年までアトリエの壁に裏返しで立て掛けられたまま置かれ、その年に題名が付けられました。題名のアヴィニョンは、スペインのバルセロナの売春宿がある街の通りの名前で、描かれている5人の裸の女性達は娼婦です。
量感を表すための影や、空間を表すための遠近法が無視され、前後感が不確かな不思議な空間が創り出されています。人物表現は、一人の人物のいくつもの姿や形が一人の人物として組み立てられ、「多視点による描写」というキュビスムの手法で表現されています。


1907年に民族博物館で見たアフリカ黒人彫刻の象徴的で抽象的な表現に感銘を受けた後、画面の右二人の女性の顔をアフリカ黒人部族の仮面のように描きました。中央の腕を上げた二人の女性は、イベリア彫刻から得たインスピレーションによってアーモンドの形をした目で描かれています。原始美術の探求と作品への応用は、「アヴィニョンの娘たち」以後も続けられ、「ニグロ時代」としてプリミティブ(素朴)な表現へと変化していきました。

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アフリカ黒人部族の仮面

視点の移動

正面から見た目と横から見た鼻を、一つの顔に同時に描いています。

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キュビスム以後の作品にも、異なる視点から見た目や鼻が同時に描かれ、ピカソ作品の特徴となっています。

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《ドラ・マールの肖像》1937年


なぜ古代芸術や原始美術に前衛芸術家たちは関心を持ったのか?


古代・原始芸術の特徴は、対象の細部を省略し幾何学的な形に単純化された抽象的な表現にあります。又、壁画など平面の表現においても、遠近法や明暗法などの三次元的表現技法で描かれていません。これらの特徴が、遠近法などに依拠しない絵画の新しい表現を追求していた20世紀初頭の前衛芸術家たちの目に止まり、彼らはまるで答えを見つけ出したかのように、そのプリミティブ(原始的・素朴)な表現を作品に取り入れていったのです。 過去において西洋近代美術に大きな影響を与えた芸術は、日本の浮世絵版画と原始美術の二つであり、ヨーロッパにおけるモダンアートの新しい展開に大きく寄与しました。


セザンヌ的キュビスム(原始的キュビスム)  セザンヌの影響 

「セザンヌこそ私のたった一人の師だった!彼は我々すべての父親のようなものだった」   ピカソの言葉

20世紀絵画はセザンヌと共に始まったと言われます。セザンヌが切り開いていった造形における新しい表現法は、後に続くモダンアートの画家たち、中でもマティスとピカソに大きな影響を与えました。「画家たちの画家」として、セザンヌの作品を進んで買ったのは画家たちであったことも、その存在の大きさを物語っています。

ピカソ《三人の女性》1908年
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セザンヌの研究によって造形性が強化されました。裸婦が「面」で捉えられて木彫りのような多面体で描かれています。女性の美しさの表現から離れて、女性という立体物をどのように平面上で造形的に表現するかが追及されています。

「面取り」による多面体表現 対象を「面」の集合と捉えています。
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テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

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