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総合的キュビスム 1912年~ 「パピエ・コレ」「コラージュ」の導入解体が進み、何が描かれているのか判別がつきにくくなってきました。そこで再び現実との接点を得る方法として、印刷物などを画面に張り付ける「パピエ・コレ」というコラージュ技法が取り入れられ、平面的ではあるが層化した空間が作り出されました。抑えられた色彩表現から色彩が復活して洗練された表現になっていきました。
パピエ・コレとコラージュ 表現に現実感を持たせる。パピエ・コレとは「貼り付けられた紙」という意味で、新聞紙・楽譜・ラベルなど実物の紙類をキャンヴァスに貼り付けることを言います。コラージュとは「糊で貼る」という意味を持ち、パピエ・コレから発展したもので様々な物を貼り付ける技法を言います。
《籐椅子のある静物》1912年
絵画史上最初のコラージュ作品
ピカソの最初のコラージュによる作品。本物の籐椅子に絵が描かれている様に見えますが、ロープで枠取りした楕円形のキャンヴァスに「籐椅子の模様が印刷された油布」を貼り付け、果物ナイフ、輪切りのレモン、グラス、パイプ新聞(ジュルナル)の三文字「JOU」が絵の具で描かれています。現実の物と絵画の結びつきは我々の目をまごつかせます。この“まごつき”が、作品の新しい意味づけを生み、以後の20世紀絵画の新しい視覚表現として、イリュージョニズムと関連して発展していくのです。
パピエ・コレによる作品
パピエ・コレの導入によって、現実的なイリュージョン(錯覚)のない、切り抜かれた新聞紙、壁紙、酒瓶のラベル、色紙など実物の紙類が糊づけされています。ギターやボトル等の形に切り抜いた紙を組み合わせたり、あえて白地のままに形を残したりして平面的な表現の中に多層な空間を作り出しています。キュビスム開始当初から色彩には関心が払われてきませんでしたが、1912年頃以後の総合的キュビスムから色彩が復活しました。更に画期的なこととしては、文字が画面に書き込まれるようになったことです。
《ヴュー・マルクの瓶・グラス・ギター・新聞》1913年

《ギター》1913年

《グラスとシュズの瓶》1912年
ロココ的キュビスム
1914年頃から、総合的キュビスムで蘇った色彩を更に豊かにして、緑色を基調とした装飾的な作品を描き始めました。その優雅な表現から、18世紀の華やかな芸術文化ロココに喩えて、ロココ的キュビスムと呼ばれています。この作品は、縁飾りのある椅子に腰掛ける娘が描かれており、点描によって描かれた面が際立つように画面に配されています。コラージュによって貼り付けられたかに見える茶色の壁紙の断片や大理石の模様は、油彩によって描かれたもので、イリュージョン(錯覚)を否定するコラージュ技法そのものをイリュージョンとして描いています。「コラージュによって描かれた絵を」描いている絵として興味深く、又、緑色の微妙なニュアンスが美しい。ブラックとのキュビスムは1914年で終わりを告げ、ピカソの表現も、平面性が一段と強化された抽象的な色面構成へと変化していきました。
《若い娘の肖像》1914年

(部分 点描)

1915年に描かれた「アルルカン」の幾何学模様は、早くからピカソを魅了したものの一つです。キュビスムの空間らしく、アルルカンの背後の青と茶色の長方形が、前後が入れ替わる錯視的な描き方で表現され画面を面白くしています。マティスの「金魚とパレット」と表現の共通性が指摘される名作です。
《アルルカン》1915年

マティス《金魚とパレット》1915~1916年

セザンヌに影響されたピカソとブラックは、遠近法や明暗法を使わずして三次元の立体物を二次元の平面でどう表現するかということを徹底的に追及しました。その結果としてキュビスムが生み出されました。「多視点の導入」「分析解体」「再構成」「コラージュ」「パピエ・コレ」などの表現法が取り入れられました。
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テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術