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ピカソⅦ「シュルレアリスムの時代」

20世紀を虜にした画家ピカソ・変貌の軌跡


シュルレアリスムの時代 1925年~1936年 超現実主義に接近

シュルレアリスム(超現実主義)とは1924年にアンドレ・ブルドンらによって始められた20世紀最大の芸術運動で、人間の奥底に隠された無意識や夢の世界に芸術表現の領域を拡げました。ピカソは新しい表現を模索していた頃で、ブルドンらは、当時すでに有名になっていたピカソがシュルレアリスムの表現で作品を制作することが、その運動の発展に繋がっていくという期待を持ち、積極的にピカソに近づいて行きました。ピカソは超現実主義者たちに刺激を受け、人物を現実には存在しないであろう非現実的な形態に変えて描くようになりました。想像力が駆使された超現実主義的な手法でピカソ独自の世界が展開された時代を「シュルレアリスムの時代」と呼びます。

《三人のダンサー》1925年
三人のダンサー1925年_convert_20100504163821

妻オルガに対する不満が大きく膨らんだ時に描かれたと言われている作品。ピカソの不安定な精神状態が反映されていると思います。新古典主義の静寂な作風が一変され、不穏で暴力的な感じがする表現です。左のダンサーは怪物のように顔が変形され、中央で踊るダンサーは、十字架にかけられたようなポーズをしています。右のダンーサは、死亡した友人のシルエットが描かれ、二重の人体からなっています。形や空間の共有化、パピエ・コレを思わせる壁の模様など、キュビスムの表現法が生かされています。

《恋人たち》1923年 《三人のダンサー》のわずか2年前、新古典主義の静寂な画風
恋人たち1923年_convert_20100504172036

《頭部モニュメントのための習作》1929年
頭部モニュメントのための習作1929年_convert_20100504164049

シュルレアリスムの時代の作品らしく、現実には存在しない不思議な形をした物体が、モニュメンタル(記念碑的)に描かれています。鑑賞も具体的な物の形に結びつけて終わらせるのではなく、ピカソの想像力によって作り出されたオリジナルな物体として、形のユーモラスさ、不思議さ、柔らかな陰影の美しさ、彫刻的な物の存在感や空間を楽しむのが良いと思われます。

《ビーチにて》1937年
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不思議な生物や、幾つものパーツで出来上がっているロボットが連想される人物像。非現実的な世界が展開されています。

マリー=テレーズ・ワルテルとの出会い 

 「ピカソです、二人で一緒に素晴らしいことをしましょう」と、ピカソが声をかけた女性。娘マイヤを産む。

ピカソの作風が変わる頃には大抵新しい女性が登場すると言われています。

マリー=テレーズ・ワルテル
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《顔》1929年
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1927年、ピカソ(46歳)は17歳のマリー=テレーズを見染めます。ピカソがギリシャ彫刻のなかに見出していた理想の女の顔をマリー=テレーズに見たのです。美しいブロンドの髪と青い目を持ち、女性らしいふくよかな体つきがピカソの表現欲を刺激しました。作品では黄色の髪と、額と鼻が同じ高さで繋がる女性として描かれています。彫像も多く作られました。

1925年~1936年までの作品


《画家とモデル》1928年
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見る者と見られる者の「画家とモデル」のテーマは、ピカソの生涯にわたる大きなテーマとなりました。マティスの作品からヒントを得た分割線による画面構成が試みられています。情感を抜いた造形的な形の面白さや、人間をここまで記号のように単純化して“絵”にしてしまうピカソの造形感覚は抜きん出ています。画面中央に描かれた横顔はピカソだと言われています。

《赤い肘掛椅子の女》1929年
赤い肘掛椅子の女1929年_convert_20100506015304

妻オルガに対する愛情が次第に薄れつつあったピカソは、オルガを歯がむき出て鋭く尖がった頭部の不気味な物体に変えてしまった。しかし、ソファーの赤色の美しさが画面の不穏さを和らげている。

《頭部》1928年
頭部1928年_convert_20100506021937

顔全体が大きな口のような怪物が小さな人間を飲み込もうとしています。ピカソは20年代後半になると、オルガを怪物じみた顔で描くようになりました。しかし、赤茶色の背景が黒い描線を美しく見せています。

《鏡の前の少女》1932年
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マリー=テレーズを暗示する黄色い髪の女性が、鏡に映る自分の姿を見ています。太く黒い輪郭線の強さと色彩の鮮やかさの一体化が画面を強固にし、鑑賞者への訴求力を高めています。又、ピカソ程、画面に縞模様を描いた画家は他にいないのではないでしょうか。その縞模様が効果的に使われて女性の身体の表現となっています。顔は、横顔と正面から見た顔が結合してまする。そのままを映し出す鏡なのに、女性の顔や姿が大きく変えられているのは、ピカソが人間の二面性を表そうとしたのだと解釈されています。

《夢》1932年
夢1932年+(2)_convert_20100506015537

肘掛椅子に腰かけ眠っているマリー=テレーズです。頭部から始まる曲線が、連続的な繋がりを見せて下方に下っています。横顔と正面から見た顔の結合、二つの背景、ネックレス、身体、両腕、服、シワ、ソファーの各色が二分されているように、この作品は対立する二つの要素で構成されています。それによって、画面全体の極度の平面化が回避され、画面に凹凸感がついて椅子に座る女性の存在感が作り出されています。赤や黄色の原色と、白や桃色などの中間色の組み合わせが美しい作品で、背景の菱形模様が画面にアクセントをつけています。

ピカソとマティス 良きライバル


ピカソ《赤い肘掛椅子の裸婦》1929年
赤い肘掛椅子の裸婦1929年_convert_20100506015422

マティス《タンバリンのあるオダリスク》1926年
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ピカソ《黄色い髪の女性》1931年
黄色い髪の女性1931年_convert_20100506022044

マティス《夢》1940年
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2010年5月4日、史上最高額 100億円 で落札されたピカソの作品

《ヌード、観葉植物と胸像》1932年

130×162cm
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テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

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