アート/ARTでも、その作品の中から数回に亘って紹介致します。
【白百合】
レオナルド・ダ・ヴィンチ《受胎告知》1472~73年

「受胎告知・部分」

受胎告知は、大天使ガブリエルが聖母マリアを訪れ、聖霊により神の子キリストを授かったことを告げるという聖ルカ伝の記述をもとに描かれています。キリスト教絵画は、聖書が読めない人々に布教する目的で描かれました。それ故に、描かれた図像からその意味を読み取ることができる「読む絵画」です。
図像学(イコノグラフィー)古典絵画に描かれたいろいろな物の意味・約束事を読み解く為の学問
白百合‥純潔の象徴 赤と青の衣‥聖母マリアを示す 立てた2本の指‥祝福を表す
雉‥権威 鳩‥聖霊 天使ガブリエルは左側に配置
フランツ・フォン・シュトック《無垢》1889年

ドイツ象徴主義の画家です。
顔と腕と手にしたユリの花がリアルに描かれています。薄手のドレスが壁に溶け込んでいるようでもあり、女性が壁に包みこまれているようでもあります。顔と腕が壁から突き出ているようです。全体的な柔らかい色合いが美しく、その中の白百合の茎と頭部の暗色が印象的な作品です。茎と女性の体のラインで出来る逆三角形が、この作品の魅力的な要素だと思います。
松井冬子《印刻された四股の祭壇》2007年

松井の作品の魅力は、何といっても緊張感にあふれた美しい描線にあると思います。絵の具を何度も塗り重ねて色
彩による半抽象的な作品が多い昨今の日本画の世界にあって、松井は線で主張できる画家の一人です。
線の芸術である日本画本来の姿に戻ったかのような表現は、作品内容はともかく、厚塗りの日本画に見慣れてきた者に新鮮な感じを抱かせます。「幽霊」「死体」「内臓・脳」「切り裂かれた皮膚」「動物(犬)」などを題材として、日本画の伝統技法である絹本に岩絵の具を用いて(松井の成功はこの描法を選択したところにあると思います。)リアルな描写で「死」「狂気」「暴力」「恐怖」を表現しています。恐怖に満ちたグロテスクな画面は、見る者に“痛み”を感じさ、その痛みが「美」と結びつくところに松井の芸術世界が存在しています。
グロテスクな画面の中の白百合の存在が際立っています。
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