モネ(1840-1926)印象主義の体現者
《睡蓮》1916年 国立西洋美術館 200.5×201cm

《部分》

印象派技法(筆触分割)から離れ、絵の具をキャンバスの上で混ぜています。モネの絵画的な関心は、光の効果や睡蓮そのものの描写ではなく、絵の具が混じり合うことで微妙に変化して、色同士が響き合う美しさに向かっていきました。絶妙の混ぜ具合で出来る色のムラの変化が、鑑賞者に味わいを感じさせます。
モネ《睡蓮》1917年~19年

白内障が徐々に悪化している頃に描かれた睡蓮。まさに心の眼で描かれた睡蓮。まるでパステルで描いた自由な線画のようです。流動する線が生き生きと描かれています。睡蓮の連作と知っていて鑑賞するから睡蓮なのであって、知らなければ中心の無い抽象的な絵画作品のようです。(絵画の中心とは、花が描かれた静物画ならば花が中心) この睡蓮の連作を先駆として、視覚的中心が無く無焦点な(オ―ルオーバー)絵画を表出した画家がジャクソン・ポロックす。ポロックは戦後のアメリカの現代美術を代表する抽象表現主義の画家です。
ジャクソン・ポロック《秋のリズム》1951年

《青花辰砂蓮花文壺》朝鮮時代・18世紀

朝鮮時代(李朝)の陶磁器
李氏朝鮮(りしちょうせん、1392年ー1910年)は、朝鮮半島の最後の王朝。李朝(りちょう)とも言う(李王朝の意)。高麗の次の王朝。
朝鮮時代にはさまざまな陶磁器がつくられましたが、一貫して生産され続けたのが白磁です。とくに15世紀前半には、「世宗朝(1419~1450)の御器(ぎょき)は、もっぱら白磁を用う」という記録を裏付けるように、端正な器形と純白の釉調のすぐれた白磁を作りあげました。
青花辰砂蓮花文壺は大阪市立東洋陶磁美術館が所蔵する名品中の名品。李朝の美をいち早く知らしめた浅川伯教(あさかわのりたか)が所蔵していました。呉須によって線が描かれ、辰砂(しんしゃ・銅を成分とする赤い顔料)で彩色がなされています。優美さと気品を兼ね備えた一品だと思います。
《睡蓮》2002年 木彫 須田悦弘

須田悦弘(1969~ )は、植物を木から彫り出し、それに彩色をする作品を制作しているアーティストです。作品は本物と見間違えるほどにリアルで精巧です。その作品が置かれる場所は「何でこんな所に、こんなものが‥」(デペイズマン)といった空間です。この睡蓮は、アクリル板に咲く睡蓮です。作品と作品が置かれた空間を合わせて作りだされるアートです。 現代の「よりリアルなもの」が追求されるアート・ワールドにあって、注目されている作家です。
シュルレアリスムを代表する画家で、デペイズマンの手法で描いたマグリットの「闘技士たちの墓」に通底すると思います。
【デペイズマンとは】
シュルレアリスムの常套的方法論で「不一致の一致」と訳されます。物を本来あるべきところから別のところへ移すことで新しい美やイメージを創り出す方法。全く関係のない物同士を共存させて“驚き”を生み出し不合理による創造性を呼び起そうとするもので、ロートレアモンの詩がデペイズマンのすべてを語りシュルレアリスムの美学となっています。
マグリット「闘技士たちの墓」1960年

スポンサーサイト