ヤン・ダヴィス・デ・ヘーム《青い花瓶の花》1670年

デ・ヘームは17世紀のオランダで活躍した画家です。
1609年、スペインから独立したオランダでは、通商の発達により人々の暮らしぶりは豊かになりました。また宗教改革により宗教絵画の衰退があり、絵画の注文が教会や貴族から市民層へと変わっていきました。市民は室内に飾る絵画として心地よい風景画や風俗画、そして静物画を求めるようになりました。それまで静物画は、宗教画の中の一部分であったのが独立したジャンルとなったのです。
この時代、花を中心とした静物画が多く描かれました。それは、どんなに綺麗に咲く花もいずれ枯れてしまうので、花は“はかなさ”を象徴するものとして、多くの画家がモチーフとして描きました。
はかなさをテーマに描く静物画を「ヴァニタス画」(生のはかなさ、虚栄、現生の空しさを表す)といいます。
《青い花瓶の花》には、異なる季節に咲く花々が同時に描かれていて、非常に緻密で鮮明な写実描写と、彩色の美しさに圧倒されます。バラ・カーネーション・アサガオ(復活・生命)、ケシ(死)‥今美しくても、すぐに朽ちて行く花々に、「メメント・モリ」ラテン語の警句 “死を忘れるな ”という戒めを込めています。
ヴュイヤール《ライラック》1892年

エデュアール・ヴュイヤール(1868~1940)
ボナールと共にナビ派を結成したフランスの画家です。しかし、ナビ派の他のメンバーであるドニ、セリュジェ等宗教色の強い画家達からは離れた立場で、見る者が「親しみ」を感じる室内の情景を多く描きました。ナビ派の画家達の中でも特に、平面性・象徴性・装飾性を顕著に表現しました。
ライラックの花・葉そして花瓶が大胆に簡略化されています。ライラックを色面でとらえて(色紙を切り抜いて貼ったような)、平面的で装飾的な、まったく新しいイメージの花です。
ナビ派とは?
19世紀末に、ゴーギャンの影響を受けて結成されました。絵画を平面装飾品として位置づけ、平面性・象徴性・装飾性を重要視しまし。そういった共通点はあるものの、強い結束力はなかったようです。
2年余りのナビ派の理論への固執(実践)から離れて、日常の自分を取り巻く平凡な事物を描くようになります。その絵画の中には理論はなく、変わったことは何も起こらない。ただ静かで安らかな日常の風景があるだけです。が、ヴュイヤールによってそれらに与えられた輝きは、美しい情緒(雰囲気)となって伝わってきます。
ヴュイヤール《猫》1893年

ジェフ・クーンズ《パピー》1997年 ビルバオ・グッケンハイム美術館

高さ12メートルの鉄の骨組みに、何色ものパンジーを始め、多種の花々を埋め込み、子犬(ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア)の形に刈り込まれたトピアリー彫刻です。商品としての犬の置き物を流用して作り出された作品です。子犬はその大きさと、花でできていることに人々は驚きます。アートと商品との境界を曖昧にするシミュレーション・アートの作品です。
シミュレーション・アートとは
1980年代にニューヨークを中心に広まったアートです。
コピー(商品)を流用することによってオリジナルの価値を薄め、コピーとオリジナルの境界線を失くすことで新しいアートの在り方を提示しました。
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